アジアツアーの感想文、もしくは反省文

f:id:fall_nocturne:20190427190705p:plain

一昨日、とあるラブライバーと焼肉を食べた。ライブ直後に出会ったオタク同士、語るのはもちろんライブのこと。Aqoursのアジアツアー。

「まあチケット当たったら現地行くけど別にLVでもいいや」って感じの私とは違って、その人はいわゆる全通勢であり、今回のアジアツアーも全公演に参加していた。

彼は「傲慢だった」と語る。それを聞いた私は頷く。

回想。私はLVを毎回観ていた。上海公演。フィルムコンサートという新しい試みは、初の海外ツアーにぴったりだった。丁寧で冴えたやり方である。やるべきことをちゃんとやるというラブライブらしい真剣さを感じた。

台北公演。さすがに二回目となると慣れる。アニメの演出とか、久しぶりの楽曲とか、細かい振り付けなどをチェックしていた。やっぱラブライブっていいな。

幕張公演。そろそろ飽きてくる。退屈だと思った。特に語る事もない。

いや、わかる。もちろんそれは自己責任だ。全通勢のためにツアーをやってるわけではない。私はツアーのセトリに文句を言う全通勢が嫌いで、普段もTwitterとかでそういう話をしている。公式のせいにするつもりはない。しかし、個人としてはやっぱり、楽しさは感じられなくなってくる。個人的感想。それだけのこと。仕方ないだろう。

上海の時点でほぼ確信していた。これは最後まで同じセトリが続くだろうと。それが正しいから。なので別にLVに毎回行く必要もなかったけれど、なぜかそうしなかった。義務感でもあったのかな。

しかし、結論から言うと、その後現地で参加したソウル公演はとても楽しかった。

と、私の話だけで終わらせたら、誰かに「LVと現地は違うからな」と言われてしまうだろう。だが、テーブルの向こうの彼も似たようなことを語った。最初は楽しかった。でも観てるうちにさすがに飽きてきた。幕張とかもうチケット買ってるから止むを得ず消化してる感じになった。全通勢の宿命ってやつだ。

そんな彼もソウル公演が一番楽しかったと語る。8回も同じものを観ているのに、最後が一番楽しかったと。何にせよ海外ツアーを全通するような人だ。その周りにも全通勢が多いらしいが、彼らも大体同じ感想だったと教えてくれた。

ソウル公演は楽しかった。Twitterとかでも誰もがそう語っていた。もちろん2ndツアーも3rdツアーも千秋楽は高評価されているけど、それは内容が変わっていたからである。今回のソウル公演はそういうわけでもない。内容の違いなんて無きに等しい。

その理由は何だろう。ファン企画のおかげだと言われるかも知れないが、それはちょっと違う。ブレード企画とか、アンコールの合唱とか、全部後半の出来事であり、実際に体験したのはせいぜい数分くらいだ。確かに印象的だが、それだけで「ライブが楽しかった」とはならない。

でも、内容が同じである以上、やっぱり違いは客である。ソウル公演の客は熱狂的で、それは「企画」の時だけではなかった。ブレードで、コールで、拍手で、合唱で、沈黙で。ライブの一曲、一曲を全力で楽しんでいた。もちろん、そんなのはどの公演でもあるのだが、次元が違う。私は3rd初日の「Awaken the power」の盛り上がりを思い出した。そんな雰囲気がライブ中ずっと続いていた。

「楽しそうだな」と思った。みんな楽しくて仕方がないんだな。本当にAqoursが大好きなんだな。そして、会場の熱気に身を任せると「楽しそうだな」は徐々に「楽しい」に変わっていく。

ステージを観る。何回も観てきたパフォーマンスだ。なのに、これまでとは違う。パフォーマンスとしての笑顔ではなく、心からの笑顔を浮かべるキャストがいる。表情が顔に出るというか、もはや体に出ているキャストもいる。好きすぎていつも集中して観てる振り付けがあるが、これまでの公演に比べて動作がかなり大きくなっていた。気のせいとかそういうレベルではない。ノリノリだった。

ちゃんと届いていた。これだけの声援だ。そりゃあ彼女たちも楽しいのだろう。それがまた楽しく思えてくる。私はもっともっと声を上げる。パフォーマンスを目に焼き付けて楽しむ。次の曲はなんだろう?楽しみだな。楽しいな。退屈だなんて一瞬も思わなかった。そんなライブだった。ライブをこういう風に楽しめたのはいつ以来なんだ?

だからこそ、彼は「傲慢だった」と語る。だからこそ、それを聞いた私は頷く。

Aqoursの物語がどんなものだったのか、彼女たちが今まで何を歌ってきたのか。知っていたけど、きっとわかってはいなかったんだ。「Aqoursのライブがつまらなくなったんじゃなくて、俺たちがつまらなくなってたんですね」と彼は言う。初心に返るような海外の1stライブで、私たちは忘れていた初心を突き付けられた。AqoursSaint Snowを観た渡辺月と静真高校の生徒たちもこんな気持ちだったのだろう。

もちろん、他の公演だって楽しんでいる人はいたはずだ。でも私たちにはそれが見えてなかった。だから恥ずかしいと思った。私たちは今まで何をしていたんだ?そんなことを思った現地参加者は、決して少なくないはずだ。

海外勢はイベントに参加する機会が少ないから盛り上がったのか?貴重な地元公演だから盛り上がったのか?違う。そういう理由もなくはないだろうけど、それだけじゃない。全通勢までもソウル公演は楽しかったと、参加して本当によかったと語るのだ。

日本には自然発生の奇跡があるからそれでいい?国の特性?違う。ソウル公演の「想いよひとつになれ」では多くの客がいつものサクラピンクだけではなく、黒澤ダイヤと小宮有紗さんの色であるレッドも振っていた。あらゆる曲のダイヤのソロパートでは、観客みんなが一緒に歌っていた。「No.10」では「7」を全力で叫んだ。二日目、主催側は観客を信じて「7」の音源を流さなかった。それらは配られた企画パンフレットのどこにも載っていなかった。それはまさにみんな大好き「自然発生」ではないのか?

だからって今から何かの企画を立ち上げて5thで成功させれば同じ楽しさを得られるのだろうか?違う。そうじゃない。ファン企画は結果に過ぎない。企画があったから楽しかったのではなく、楽しんでいたから、楽しかったから成功したんだと思う。普段は自分のペースで楽しむのに、あの時は、今なら何でも参加したいという気持ちだった。

輝くって、楽しむこと。

ツアー終了後、高槻かなこさんは高海千歌のそのセリフを引用していた。

それこそが正解だと思う。キャストも、観客も、輝いていた。傲慢な私たちの心を照らしたのはペンライトの光ではなく、今を全力で楽しむ人たちの輝きだったんだ。